
10月の3連休後、北アルプスに縦走に行ってきました。
素晴らしい天気と紅葉に恵まれましたが、初日は、長距離歩行と、苦手な登りの連続で、うつろ目になっていた私でした。
そんな時、前を歩いていたダンナさんが一言。
「あ、めずらしいものが落ちてる」

これがそのめずらしいものです。
私はただの鉄くずが落ちているのだと思っていました。
「これ、知らない? ジュースの缶切りだよ」
えっ、ジュース用の缶切り??
私ははじめて見ました。
「昔の缶ジュースはジュース用の缶切りがついていて、空気穴と飲み口の2か所、穴をあけてから飲んだんだよ」
ダンナさんが言うには、私の子供の頃にもあったはず、と言うのですが、記憶を探ってみても、こんな缶切りで穴をあけた覚えはないのでした。
たしか、自動販売機ははじめ、缶ではなくて、瓶入りジュースだったのは覚えていますが、缶ジュースが出てきた時には、すでにプルリングがついていたと思うのですが。

10円玉と比べてもこんなに小さい。
これが、缶ジュースの飲み口の上に置いてあり、その上からキャップがかぶさっていたので、当時は缶ジュースに直接口をつけるのは不衛生と考えられていたそうです。

缶ジュースにあててみました。
おっ、ちゃんとサイズも合っています。
インターネットで調べてみると、1954(昭和29)に、日本で初めて缶入り「天然オレンジジュース」が発売されたそうです。
その画像を見ると、確かに缶切りがついています。
その後、アメリカで、缶切り不要のプルリング方式が発明され、日本にその技術が導入されたのが、1965年。そして、1983年には飲料用缶容器のすべてがプルリングで開ける形式になったそうです。
と、いうことは、北アルプスで採取したこの缶切りは、45年前〜27年前に作られたものということですね。
もしかしたら、私が生まれる前にどこかの山屋さんのザックから転がり落ちて、風雪に耐えて北アルプスをさまよっていたのかもしれません。
なんだか、昭和の遺物に出会ったようで、一瞬疲れを忘れました。
「そんなもの、持って帰るの?」
と、ダンナさんにはあきれられましたが、しっかり持ち帰って、矢じり&土器のマイコレクションの片隅に安住していただきました。

昭和の香りと言えば、宿泊した槍ヶ岳山荘に売っていたマッチがレトロで、思わず購入してしまいました。

オレンジ色の夕日に染まる槍ヶ岳でしょうか。
雲が直線が描かれているあたり、斬新なデザインです。

裏には、雷鳥ヒュッテ(白馬にある山小屋)の文字が。
このマッチ一つ10円でした。
缶ジュースが1本300円の山小屋にしてはリーズナブルですよね。
山小屋に売っているものは、ヘリコプターで運ぶため、重い物は高く、軽い物は安いのだそうです。
マッチは昭和でしたが、山小屋は平成で、インターネットや、携帯の充電器もあったのでした。
けれど、山小屋から見る風景は、大昔から変わっていないのだろうなと思うと、この風景こそ、地球の遺物なんだろうな、という気がするのでした。